2023年
B. 高校生部門
受賞作品
最優秀賞
『同志少女よ、敵を撃て』
北海道インターナショナルスクール
金井映奈・田中樹里 (高3)
過去にもトレーラーを作ったことはありましたが、今回は初めてのペアでの挑戦でした。戦争の話はあまり読まないことが多いのですが、この本は他の本とは違う視点からの話でとても引き込まれ、この本を選びました。トレーラーを作るにあたって工夫したところは本のどの部分を皆に紹介するか、です。詳細を説明してしまうと飽きてしまい、大雑把に説明すると意味がわからなくなってしまい難しかったですが、良い作品になったと思います。
審査員から
本が提起している難しい課題に正面から向かい、映像とイラスト、文字でうまく表現しました。シルエットのようになっているところも素敵です。構成とテロップがとてもよく練られています。どこにも引っかかることなく、むしろ引き込まれる内容で、本を読んでみようと思わせる作品でした。音楽とのリンクも心地いい。後半にもひとつ、主人公のセリフが入ってもいいかな、と思いました。
優秀賞
『十二夜』
広島インターナショナルスクール
青山 陽夏人 (高1)
学校課題のためこの作品を選びました。今回のブックトレーラーは「シェイクスピア作品」ということを強調するために、「シェイクスピアによる糸人形劇 〜十二夜〜」をコンセプトに動画を制作しました。物語が複雑なので、あえて子供が描くようなポップな絵を使い、分かりやすいトレーラー作りを心がけました。
『ちはやふる 上の句』
富士陽光学園
永田光(高3)
この本を選んだ理由はこの本の主人公のように、部活、恋、勉強と学生だからこそできる体験を大切にして欲しいからです。今はコロナで中々思い通りとはいかない生活ですが、この本を読んで少しでも学校生活が楽しくなればといいなと選びました。また、様々な事情があり、学校へ行くことだけで精一杯の方もいると思いますが、やりたいことを追いかけたくなる原動力になれたら嬉しいです。動画で工夫したところは、仲間と一緒にゆずれない大事なものを追いかける「青春」をうまく引き出せるよう心掛けたことです。
準優秀賞
『君の膵臓をたべたい』
鳥取県立米子南高等学校
安田 愛姫羽(高2)
私がこの本を選んだのは、今まで読んだ本の中で一番面白くて、感動した作品だったからです。私が一番工夫をしたところは外部の画像や動画を使わず、自分で作ることです。すべて自分で絵を書き、動きを付けました。すべてアナログで仕上げたのは、本の雰囲気に合わせたかったからです。音楽は著作権フリーのものを使いましたが、声の演出は友人に頼んですべて自分で録音しました。全体的にまだ甘いところも多いですが、音楽と声の入り方、画像の入り方など微調整を繰り返して良い作品にしあがったと思います。「君の膵臓をたべたい」は、常に"命"にふれて物語が進んでいきます。コロナ禍である今であるからこそ、一番読んでほしい本です。私のブックトレーラーを見て、少しでも興味を持ってくれる人がいればいいなと思います。
『レッドスワンの絶命 赤羽高校サッカー部』
鳥取県立米子南高等学校
西垣 美希(高2)
レッドスワンの絶命を選んだのは、何回も読み返すほど私のお気に入りの本だったからです。サッカー部の存続のために困難を乗り越える話なので緊迫した雰囲気をBGMで出せるように工夫しました。小説の中の初めの負けるシーンが一番ドキドキしてその流れが終盤まで続くように画像も暗めにしてBGMと合うようにしました。小説のクライマックスの最後の試合がどうなるのかわくわくできるように動画を作りました。最後に希望が見えるように文字の工夫をしたのもポイントです。
『弧霊の檻』
鳥取県立米子南高等学校
清田 真央(高2)
本を選んだ理由は中学の時に初めて読んだ本で一番おもしろく印象的だったから。絵を描くことで物語とあった表現ができた。詳しくあらすじをかいたのは最初の二ページの序順のみなのでいざ手に取って読んだときにネタバレをしないような構成にできた。少し絵を動かすことができ、文字のスピードやエフェクトも場所によって変えることができた。
『ロミオとロミオは永遠に』
大妻高等学校
横内結香(高1)
今回この作品を選んだ理由は、この作品の世界観や、高校生が必死に巨大な権力に立ち向かっている姿が好きだからです。また、作品中の過去の人間の行いが未来の人間たちに影響を及ぼしているという状態が、私たちの日常生活を見直すきっかけにもなると思ったからです。 動画が後半になるにつれて、不気味で不穏な雰囲気が出るように工夫しました。登場人物たちの心情が少しづつ変わっていくのを表現し、今後彼らがどのような行動に出るのかが気になるような動画の終わり方を心掛けました。
特別賞
『ファオランの冒険
1王となるべき子の誕生』
聖徳学園高等学校
鈴木 茉亜弥(高1)
選んだ理由は単純に好きだからで、自分が動物、特にオオカミやフクロウなどを好きになったきっかけでもある本だからです。生物系を目指している私にとっては現在の人生の指標になっていると言っても過言ではなく、それほどまでに私の心を揺さぶった作品をもっと色々な人に知って欲しいの一心です。 工夫した点としては、私の使用しているiMovieが連続的なアニメーション作りができないので、最初のパートの手書き文字や炎などのあきらかに自作の、動きのあるものはibisで書き出し、画面録画をカットしたりと色々面倒な作業を行った点です。それと、どのように一枚絵や写真に動きや変化をつけるか考え、色付き炎は白黒に変えて、絵の明度を変化させることで燃えているように見せるという工夫もしました。 あとは音や音楽の差し込みのタイミングの調節作業が単純に大変でした。 実は動画内がわかりやすく上下の2パートに分かれていて、その合わせも大変でした。なぜ最初に分けて製作してしまったのでしょう? ストーリーラインにはあまり触れず、概念的な部分や伏線になっている部分ばかりをメンションしているので少しわかりにくいかもしれませんが、挿入しているすべての画像および動画は意味があるので、本を読み、もう一度視聴した時にあらためて理解してもらえたら面白いかなと思いました。
『後宮の烏』
山梨英和高等学校
門馬 梨桜(高2)
この本は世界観がとても美しく、キャラクター達の関係性の変化や、烏妃が様々な困難に立ち向かっていく姿が読んでいて、とても面白いです。なので、より多くの人にこの本を知ってもらいたいということで選ばせていただきました。 この本は人の「死」に関わってくる話が多いため、背景は全体的に黒を使いました。また、音楽は前半は烏妃が謎めいた存在であることを強調させるため、ミステリアスな雰囲気の音源にして、後半はゆったりとした雰囲気で終わらせたかったので穏やかな音源を使用させていただきました。 編集にはKeynoteとCapCutを使いました。
B部門 総評
辻 貴司先生
映像作品としての魅力の高い作品が多かった印象です。一方で、物語の内容については、情報が少なすぎたり、逆に多く語りすぎたりするケースが散見されました。本を読んだことのない人にも原作の魅力が伝わるように、と配慮が見られた作品には、「その本を読んでみたい!」と思わせる力があったように思います。
西澤 廣人先生
どう作ろうかを考えてイメージしたものを、しっかりと形にできていると感じました。手法を試して使えると思ったものはどんどん取り込んでいっているのもすばらしいところです。あとは、細部に対するこだわりをどこまで突き詰めるか。最後の部分の音の処理や、文字を表示する時間、全体のテイストの統一から外れているものはないかなど。ここまで作れる人がさらにこだわったらどんな作品ができるのか、楽しみにしています。
西山 光子元編集長・現出版プロデューサー
どの作品もとても完成度が高く、制作意図がわかりやすく伝わってきました。写真や文字、イラストの調和、映像の切り取り方、ナレーションの長さや口調など、それぞれが工夫して制作にあたった様子がうかがえます。気をつけたいのは、あまり多くを語りすぎないこと。最後までストーリーがわかってしまうと、本を手に取る気持ちを失ってしまいます。この点に注意して制作にあたると、さらに良い作品になるでしょう。